旅に出よう、滅びゆく世界の果てまで

最近読んで清清しい気持ちになった作品。

この物語の主人公2人は、共に名前が出てきません。
・・・というより、そもそも名前がありません。もともとあったみたいなんですが、喪失症という謎の全世界的病気によって
名前を失ってしまったみたいです。
この物語における世界は、この喪失症と呼ばれる症状によってどんどんと人々の存在が消えていく「終わりかけた」世界です。
そんな中、高校生だった少年と少女は、1台のスーパーカブに乗って「世界の果て」を目指します。
そして、北の大地を旅していく中でであった様々な人々と、交流をしていきます。

ここから感想です。
「終わりゆく世界」という絶望的な状況の中で旅をしていくと聞くと、なんだか死に物狂いという感じがしますが、
この世界はリアルの世界よりも清清しい、すべてが純粋で出来ているような気さえしてきます。
二人の旅する動機もそんなに重いものじゃありません。「旅いこっか」みたいな感じなんです。そんなもんです。
でもその動機はきわめて純粋で、二人の想いも「少女と一緒なら」「少年と一緒なら」ととてもシンプルです。
世界の感じ的には、俺の知る中では「黄泉がえり」が一番近いです。・・・いや、違うなぁ。なんだろ。

物語を読み終えた後、この二人の旅する世界が瞼の裏に広がって見えるような錯覚を覚えます。
澄み切った空、何も無い草原、土の匂い、新鮮な野菜、清清しい空間…
思えば、それは子供の頃の夏の思い出に近いかもしれません。この本を読んで清清しい気分に慣れるのは、
子供の頃の思い出を想ってしまうからでしょうか。
意味不明ですねw

是非続刊を出してもらって、少年と少女がどこに行き着くのか知りたいです。
そしてそれ以上に、この作品を映像化してほしいです。どんなに清清しい作品に仕上がるのでしょうか。